死に至る病

面白いこと何も言えません

シリアルキラー 1

f:id:yuki-g-freak:20180219184503j:plain 幼児期から少年期においての、人の知的好奇心というものは、それはもう残酷なもので、生命の倫理などは全く発現の兆しも無く、ただただそれに従うのみである。
 
 幼児期の僕は、それはもう狂ったように生き物や虫や恐竜の図鑑を読んだ。あんまり図鑑とにらめっこばかりするので、保育所の先生は僕のために新しい図鑑を買ってくれたりした。それくらい、生き物に興味があったし、僕の頭の中の広大な草原では、昼夜を問わず、生き物の異種格闘技が繰り広げられていたりもした。
 
 当時はちょっとした庭のある平屋に家族で住んでいて、その庭は4歳くらいの僕が冒険するには十分な広さだった。
 
 ある日、いつものようにお気に入りのワニの模型を片手に庭に出た僕は、庭土に転がっている大きい石をよいしょ、とめくった。そこが団子虫たちの楽園だと知っていたからだ。
 
 団子虫ほど、幼児のおもちゃになる虫は居ないだろう。つっつくと身を守ろうとして団子になる様がかわいらしいし、掌で転がしたりなんかしても十分楽しい。
 
 そのようにしてひとしきり遊んだ後、僕は半開きになっているワニの口に、団子虫たちを無理やり押し込んで、自身の手でもってそれを咀嚼させた。ワニの鋭い牙に押し潰された団子虫は、みるみるうちに元の姿を留めなくなり、僕の興味が尽きる頃には完全なペーストと化していた。
 
 僕はその行為に何の罪悪も感じてはいなかったし、むしろ、ワニにエサをやることに喜びを感じていた。当時、僕の生き物に対する興味は、他の幼児の例に漏れず、現実であれ空想であれ、只の遊びの道具としてに過ぎなかった。  
 そして、その遊びに知的好奇心が付与され、何の罪もない生き物に対しての残虐非道な仕打ちは、それから数年後、小学生という悪魔によって執行されることになる。        
                    続く